私は一介の布団職人として、これまで数十年間もの間、ひたすら得意先の要望に基づいたお昼寝布団を作ってきました。

綿わた100％のお昼寝布団は、ポリエステルわた製のお昼寝布団に比ると、高価で扱いにも手間が掛かるという欠点がありますが、子供達が健康に育ってくれることを励みに、また商品を指名買いしてくださる方々の喜びの声を励みに、誇りとこだわりを持って仕事をしてきました。

ところが、数年前から「モノは安ければ安いほど良い(?)」という考えの影響か、子供達の睡眠の質までを考えてお昼寝布団を選ばずに、価格を最優先する方が増えてきました。（決して高価なものが売れないというのではなく、しっかりとした選択眼をお持ちの方は、わざわざ探してでも 綿わた100%のお昼寝布団をお求めになっているのですが・・・。）

このような社会情勢下の営利企業では、必然的に「売上げ至上主義」が優先され、瞬く間に店頭から高価な綿わた100%のお昼寝布団が消え、ポリエステルわた製の安い製品に取って代わりました。
その上、昔のように綿わた100%のお昼寝布団の特徴や良さを正しく伝えことのできる販売員が減ったことで、お昼寝布団を必要とする親御さんも、選択基準が分からなくなってしまったのです。

そして、綿わた100%のお昼寝布団を作っていた私達布団職人は、今後の身の振り方を迫られるようになりました。それまでこだわり続けた綿わた100%のお昼寝布団を造ることをやめて、安価なポリエステルわたを使った製品を作るか、廃業の道を選ぶかのどちらかを迫られたのです。

背に腹は変えられないと、職人の誇りを捨ててポリエステルわたのお昼寝布団製造にシフトした職人や、廃業の道を選ぶ布団職人が続出しましたが、そんな中、私はあえてどちらも選ばず、従来の綿わた100%のお昼寝布団を作り続ける道を選びました。当然、得意先からの発注は激減し、全く注文がこない月がでる有様でした。

正直に申しますと、私も家族の生活を支える身である以上「いっそ売れるポリエステルわたの お昼寝布団 を作ろうか。」とか、「もう辞めよう。」という考えが頭をよぎったことも幾度となくありました。

が、そんな中、私を支え続けてくださったのは、綿わた100%のお昼寝布団を指名買いしてくださるお客様方でした。

ポリエステルわたの廉価なお昼寝布団しか並ばなくなった店頭では、何も分からないたくさんの方々が、お子様やお孫様のためにそれらの商品を購入されていましたが、そのほとんどを占める外国製お昼寝布団のたびかさなる信じられないような品質問題や、繊維の特性上すぐにぺちゃんこになってしまう商品特性も重なり、手に入らなくなった綿わた100%のお昼寝布団をお求めになる声が日増しに増え、皮肉にもまた私の元に商品の注文が入るようになったのです。

その時私は思いました。

「こんな企業側の一方的で身勝手な論理で、消費者を混乱させるのは商売として正しいことなのだろうか？それに何よりも、乳幼児のお子様の肌に直接触れるモノを商売の競争原理で推し量り、何の商品知識も知らない親御さんに、安さやキャラクターのプリントがあるというごまかしの価値判断を押し付けても良いのだろうか？その結果、将来しわ寄せを食うのは子供達じゃないか！」

「よし、私が直接皆さんに伝えよう！」

・・・こんな経緯があって、平成20年にこの【お昼寝布団本舗】をオープンさせました。

「たかがお昼寝布団だけれども、子ども達の健やかなご成長と将来のためにも、正しい選択眼を見に付けていただく指針になるだけでも本望。」と半ばやけくそな気持ちもありましたが、ふたを開けてみると、「こんなにも沢山の方々が、綿わた100%のお昼寝布団を探していらっしゃったのか！」という驚きと、多くの親御さんから頂いたお礼の声や励ましの声は、逆に私を奮い立たせてくれる原動力となっています。

子供用綿わた100%お昼寝布団を手作りする最後の職人となろうとも、このこだわりは守り通したいと考えています。

私が熱い想いを込めて手作りする、「純綿100%のお昼寝布団」を、将来性あるお子様に捧げます。